今まで張り詰めていた緊張の糸が、ぷつんと切れた。

 込み上げてくる感情を抑えられない、両手で顔を覆い肩を震わせる。

 ベリルは、その後ろ姿を静かに見つめた。

「カレンは、あたしに普通の人間としての生き方を教えてくれたんだ……たった1人の友達だった」

 涙を数滴カーペットに落とし、むせび泣く。

「なのに!」

 ギロリとベリルを睨み付け、すぐに目を伏せた。

「じゃあ、あいつは誰なの。覆面してたけど、動きも目の色もあんただった」

「覆面?」

 ベリルはそれに眉をひそめた。

「私は覆面などしない」

「え?」

「よほどでない限り覆面など使わん。せいぜいマスクくらいだ」

「あれがよほどのコトだったんじゃないの?」

 まだ疑いを向けるノインに、肩をすくめる。