ノインが55歳になったある日──

「あなたのおかげね」

 広い草原で、ノインは車イスを押す人物に語りかける。

「あなたの時間をあたしは沢山もらった。満足のいく人生だったわ」

 男は、ささやくように発したノインの前に立ち、ゆっくりしゃがみ込む。

「優しい不死者さん、ありがとう」

 目の前にいるベリルの頬に手を添えた。

 愁いを帯びたエメラルドの瞳をのぞき込んだ。

 そんな瞳に、ノインはクスッと笑みをこぼす。