ノインはベリルにキスをする──ベリルに対する負の念はすでに消えていた。

『あたしは彼にとって特別な存在なんだ』

 ベリルの秘密を知った事で、ノインの心にそんな感情が生まれていた。

「あたしはベリルの態度に一喜一憂して弱くなったと思った。けど、違うんだね」

 いぶかしげな顔をしているベリルに、

「ベリルは、誰かを守るために強くなった。だったら、あたしも強くなれる」

 ベリルを守るために、彼が愛した人たちのために──

「弱さは強さを生む。強さが生むのは険しい心だ」

 ささやくように発したベリルを見つめる。

「うん」

 今は、それがよく解る。