「そんなにつらい過去があるのに、どうして笑っていられるの?」

 ベリルは、とぎれとぎれに問いかけるノインを一瞥し目を細めた。

「さあ、何故かな」

 ノインの頭を優しくなでる。

「彼らが、それを望まないからだろうね」

「え?」

「私が暗く沈んで生き続ける事を彼らは良しとはしない。そう思えるからだよ」

 今ここにいるのは、自分自身のためだけではない、彼らのためでもある。

 彼らが私に求めるものは、人を傷つける事ではなく人を守る事だ──ささやくように発したベリルの目は鋭く、何者にも揺るがない強い光があった。