黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~

「馬鹿者が」

「ベリル」

 今にも泣き出しそうな彼女を一瞥し、ナイフを引き抜いて荒い息を整える。

「1人で盛り上がるな」

「ごめんなさい」

 震えた声で発したノインの頬に手を添える。

「お前にはすまないと思っている。私には恋愛感情は無い。私といる事で、お前の障害になるのならと思ったのだが、返って混乱させてしまったようだ」

 目を閉じて小さく笑う。

「私はこういうものには不慣れでね」

 自分に呆れて右手で顔を覆い、溜息を吐いてノインをぐいと引き寄せた。