黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~

「もう、あたしに近づかないで」

 ノインは無表情に言い放ち、部屋から出て行った。

 ベリルは、そんなノインを追う事もなく小さく溜息を吐き出した。

 彼女の想いに応えられない自分が追えるハズもない。

 恋愛感情が欠落しているのは生まれた時からだ、相手を大切には思えても特別な感情が芽生えた事はない。

 こちらがいくら拒否しても、執拗に接してくる女性が最後には「冷たいのね」と言い捨てて去っていった事も何度かあった。

 初めから「特別な扱いは出来ない」と言って拒否しているにも係わらずのその返しは、溜息以外に吐いて出てくるものはない。