黄昏の彼方~碧き蠱惑のミューゼ~

「あたし……」

 ベリルはグラスをシンクに置き、ノインの背中を優しく叩く。

「もう良い、戻れ」

 いつものように、ベリルが言う。

 静かな声──その声で心が落ち着いて、自分の部屋に戻れる。

 けど、今日は違った。

「ベリルの側で寝たい」

 ノインは、まっすぐベリルの目を見つめた。

 一瞬ベリルの目が戸惑ったように感じたけれど、でも、彼は断らない。断れるワケがない。

 あたしは、自分の心の傷を利用して、ベリルの側にいようとしてる……卑怯者だ。