「何も無い訳ではない。周囲には多くの分子が漂っている。その分子を組み替えて腕を形成する」

「あ、じゃあ。無からパンを作れるんだ」

「だから無ではないと……」

 ベリルは頭を抱えた。

「自分の意思で行っている訳ではない。失った部分が自然に構築されていくだけだ」

「そうなんだ。あ、じゃあ、あの腕は?」

 地面に転がっているベリルの腕を指差した。

「あれに不死性は無い」

「え、そうなの?」

「私から切り離された時点で不死の性質は失われる」

「えっ、じゃあ肉片持って帰っても意味無いんじゃないの?」

「全てを持ち帰るつもりだったのだろう。必ず一つは私だからね」

 小さい容器に入れておけば、元に戻るのに時間を要する。