「ちょ、やだってば!」
「なんで?」
「……なんでって。やだから!」
「なにが嫌なんだ?」
うっ……。
バスルームの前で言い合うあたしと千秋。
なにがってそんなこと聞かないでよね……。
理由なんて恥ずかしいし情けないし言えるわけない。
「言ってごらん?」
千秋はあたしの前方へ回り込むと顔を覗き込んできた。
理由なんてわかってるってかんじの顔であたしを見る。
「そんなに言えないことなのか? それとも、オレに言えないことなのか?」
クスッと笑う顔は意地悪としか言いようがない。
絶対わざとだ……!
わざとそう言ってあたしをからかってるんだ。
微笑する千秋をあたしは睨む。
「なあ、言ってみ?」
「……」
「早く聞かせて?」
「……っ」
あたしを捉える瞳がふわりと緩んで、千秋の口から発せられるやけに柔らかい声に鼓膜が震える。



