ちっぽけな声は千秋に届いていたのかわからない。
すると突然あたしの顔に影が出来て、頬っぺたに暖かいモノを感じた。
千秋があたしの頬っぺたを包み込んでいたから。
「お前に対して後ろめたいことは何もねぇから。椎菜は黙ってオレだけ見てればいいんだよ」
ドキンッとして目線を上げれば、千秋は眉を下げて微笑んだ……。
優しさの混ざるブラウンの瞳は、あたしの不安を吹き飛ばす。
「んっ……」
頷くあたしにここが大通りだってことも気にせず千秋はキスを落とした。
包まれるような暖かいキス。
そしてもう一度手を繋いで歩く。
真夏の夕方はほんの少しだけ風が吹いて、千秋の甘い香りを運んでくる。
握られたままの手から千秋の体温が流れこんで、あたしは無意識にギュッと強く握りこんだ。
ずっとあたしを見つめていてほしいと願いながら。



