……知らない幸せってあるのかもしれない。
千秋が一緒に歩いていた人はコウちゃんが目撃した人と同一人物だったと言われた。
結局あの後ファミレスではーちゃん達と別れ、あたしは炎天下の中、全力で走って帰ってきたんだ。
ベッドにダイブしてずっと枕に顔を押し付けたまま。
『確かめてみなよ? ね?』
はーちゃんはあたしにそう言ったけど、確かめて千秋はあっさり認めるの?
浮気の事実を突き付けられるくらいなら、知らない方が幸せなのかもしれない。
それでもきっと千秋のことだから何か理由があるんじゃないかって、そんな淡い期待を抱いていた。
信じてもいつかそれを砕かれるのが怖いんだ。
鼻の奥がツーンと熱くなって、じわじわと涙腺が緩み出す……。
なによぉ……。
バカ千秋……。
――ピンポーン
誰か来たみたいだ。



