桜井はいつも可愛くないことばかり言って、悪い噂が流れても強がってる。
だけど裏を返せばただの弱い女の子だ。
「かっ、帰る……」
腕を離してやると桜井は帰って行った。
ハチミツ色のふわふわの髪の毛が見えなくなるのを確認してから、僕は写真を現像するために自宅へと走った。
早く、撮った写真を見たかった。
月曜日の朝だった。
階段で桜井とすれ違ったのは。
「ちょっと童顔ボーイ!」
僕の腕を掴んで開口一番そう言った桜井。
「なに?」
「こないだ美結のこと撮ったでしょ?」
「こないだって?」
「体育館裏で撮ったでしょ!」
唇を尖らせて怒る。
僕は内心、ちょっと焦ったりしたりしなかったり。
「ああ、撮ったけど? 君を押し倒した男の写真をね?」
「嘘よ! アナタ、美結を撮ったわ!」
朝っぱらからうるさい女の子だ。



