よりによってこいつか、と顔をしかめた浩也は、溜息混じりに答える。
「さっき会いましたよ。巡回に行くと言っていたので、俺は先に戻ってきました」
「あのガキ……職務怠慢で訴えられたいのか…?」
「ああいうのが居るから日々苦情が絶えないんですよ。神野総隊長、ここはビシッと…」
神野と呼ばれた男は、唸りながら顎を撫でた。
総隊長というのだから、間違いなくかなり上の役職に就いている。
一般刑務部隊と特別刑務部隊を取り纏める、言わば愛国護民隊の司令塔が、彼・神野紫呉『じんの しぐれ』なのだ。
そんな彼は、部下である麗雨の態度に毎度頭を悩ませているわけで、実は財布を預かっているのも、彼女の金遣いが非常に荒いためだ。
まるで『お父さん』のようなポジションに不本意ながら立たされている彼は、いつも胃に穴が開きそうだった。


