カノヤは素早く反応する。


「いらっしゃい。ゆっくり見てってね」


スマイル〇円。

カノヤは内心完璧な接客だと思っていた。

が、子供はそんな彼の心情を知ってか知らずか、無反応で駄菓子を見ている。


「見ねェ顔だな。おいガキ、名前は………」



常磐が名前を尋ねようとしたその時だ。


子供は籠に入っていた大玉の飴を小さな手に掴むと、そのまま店を飛び出した。


残された二人は顔を見合わせ、しばらくして我に返る。



「ど、ドロボォォォ──!!!」

「ダメだよどんなに安いものでも万引きは犯罪だよ!」


カノヤは叫び、その後常磐が棒読みで何やら言いながら店を飛び出す。


「カノヤァ!店番頼まァ!」

「は、はぃい!」


いきなり覇気の戻った常磐に戸惑いながら、カノヤは返事をする。


常磐は、「待てクソガキコラァァ!!」と言いながら目にも留まらぬ速さで、万引き犯の子供を追って走っていった。


「足速ッΣΣ」


残されたカノヤは一人呟いた。