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「居るのはわかってる。何をしても無駄だよ。出ておいで」
男の声は比較的優しいもので、廊下に響き渡る、俗に言う『良い声』だった。
が、二人の背中には冷たいものが一筋、流れていくのが判る。
──見付かった───……!!
二人は観念して、胸像から顔を出した。
そして、声のした方を向き、怯えを悟られないように前を見据えて、拳を固く握った。
「ネズミが二匹、入り込んだようだね」
男は高そうな靴音を響かせながら二人に近付いてきた。
暗闇で男の顔は認識出来ないが、恐らくこの屋敷の主人に違いなく、アリアの父を捕らえているのはこの男だ。
「私の父を返して。……貴方が穹人を捕まえて、奴隷にしてるのは知ってるのよ。証拠だって、貴方から吐き出せば良い。通報されたくなかったら、父を返して。捕まえた穹人を解放しなさい」
アリアは凛とした態度で言った。
カノヤも何も言わないものの、男をきっと睨み付けた。


