広い廊下は身を隠すものが少なく、壁ぎわに建てられた石膏の胸像の影に隠れて、二人は人が居ないのを確認する。
まだ室内が静かだということは、常磐が上手くやってくれたのだろう。
カノヤはキョロキョロと首を動かしながら、誰も居ないのを確認し、後ろで不安そうにしているアリアに振り返った。
「次の像まで一気に走ろう。……行ける?」
「私は大丈夫よ。…行きましょう」
アリアは強く頷き、カノヤの手をぎゅうっと握り締める。
その手は震えており、不安でしょうが無いということを示していた。
カノヤは唇を堅く結び、目の前を真っすぐ見据えた。
そして、二人が駆け出そうと足に体重を掛けた時だ。
「そこに居るのは誰かな?」
よく通る男の声が、二人の背中から聞こえた。


