しかし、カノヤに剣が振り下ろされることは無かった。
何か温かいものが、カノヤを包み込んでいる。
それは、麗雨の体温だった。
彼女は小さく呻きながら、カノヤに体重を預ける。
その背中は、弥晴の剣で引き裂かれ、破けた服から肌が露出し、真っ赤な血が流れていた。
「麗雨…さん…?」
「……もう…傷付けたら…いかん……」
麗雨は弱々しく言った。
常磐、紫呉が駆け寄ってきて、麗雨の姿を見るなり顔色を変える。
弥晴に掴みかかろうとした常磐を、麗雨が制した。
「わし、穹人と人間は解り合えると思うんじゃ。……わしの存在が、その証拠に……ならんか…の…」
ずるずると崩れるように意識を失った麗雨の背を、カノヤは見た。流れ出す血の隙間から、穹人特有の羽の痣を見付け、目を丸くする。
(そうか…麗雨さんは、穹人と人間のハーフなんだ…)
常磐は紫呉に麗雨の手当てを頼むと、弥晴を睨み付けた。


