紫呉は麗雨の様子を見て、ただ事ではないと悟った。普段の無感情な彼女からは想像のつかない取り乱しようだ。
「おとやん…」
「麗雨…お前は、人間の味方をするのか?母さんを殺した奴等の味方を!」
「その男の話を聞くな!麗雨、こっちに来い!」
紫呉は唇を噛んで俯く麗雨に声を掛ける。彼女にはその声が届いていないのか、父の腕に収まったまま動こうとしない。
瓦礫が崩れ、土煙が辺りに舞い、そして応援に駆け付けた愛国護民隊の視界を奪った。
「神野さん!」
煙が晴れると同時、麗雨の今まで聞いたことのないような声が響いた。
見上げると、心配そうにこちらに駆けてくる彼女の姿があった。混乱に乗じて逃れてきたらしい。
「…………ごめんなさい…」
小さく彼女の赤い唇が動いた。


