麗雨は愕然とした。
確かに、このぬくもりは、声は、優しげな表情は、幼い頃のままの、父だった。
けれど、麗雨はそれを否定したくなった。
「ちがう、」
(おとやんは………)
かっこよくて、
強くて、
あったかくて、
優しくて。
そして、
「目の前で誰かが傷付いて、平気で笑ってるようなひとじゃなかった…」
こんなの、ちがう。
弱々しく呟いた麗雨に、父は落ち着いた優しい声色で、彼女の頭を撫でながら語り掛ける。
「俺は、マリアを殺した人間に復讐するんだよ。麗雨も、手伝ってくれるだろう?」
「…人間が………おっかあを……殺した…?」
麗雨は信じられない、と言った様子で、確認するように言葉を切った。
「今でこそ愛護として偉そうにしているが……あいつらはただの人殺しだ」
彼の言葉は、白い布に零れた黒い液体のように、麗雨の心を侵食していった。


