じいさんの家を出て、どのくらい経ったのだろうか。 

歩けど歩けど、森を抜けられない。
 
「じいさん、えらい所に住んでたんだな?」
 
「ははは。都会は私には合わなくてね」
 
兵達は無言のまま、ぐいぐい俺の手を結んだ紐をひっぱる。
 
かなり急いでいる様子だ。 

「もう少しで森を抜けるわい」
 
「本当か?」
 
青々と茂る森を抜けると、急に街の通りに出た。
 
目の前を見れば、遠くに城が見える。
 
信玄の城に勝るとも劣らない立派な城だ。
 
「あれが……」
 
「信長様の城です。さあ、行きましょう」