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「…国崎くんは、あたしの質問に答えるだけでいいから、……いい?」
放課後。
教室には誰も居らず、いるのは俺と前川。
「……おう」
…少しの緊張と、大半を占める好奇心。
ため息をつきながら顔を歪める前川を前にして、居心地が悪い、とそわそわする。
前川が話すこと、それはもう既に俺の耳には通過済み。
「…佐藤くんってさ、」
でもまさか、と思っていた。
まだ信じてはいなかったんだ。
まさか、本当に。
「……彼女とかって」
──…いるのかな?
そんなこと、俺に訊くなよって、言えばよかったのかもしれない。
板挟みにされるのは、好きではなかった。


