君にキス。







階段を昇り、外に剥き出しの渡り廊下を歩き、一般校舎から少し離れた体育館へ向かう。



深は何も言わず俺の後ろを付いて来る。
パタパタと深の歩く独特な足音。






そして体育館に近付くにつれて、何か声が聞こえてきた。
いや、楽器の音だろうか。


高くて透き通るような美しい音。




「誰かいんじゃねー?」

「…だよな」


誰かがいる気配はあった。
誰もいないはずの昼休みの体育館から、しないはずの音がするのだから。






その音は近付くにつれて鮮明になっていく。
声ではなく音であり、……フルートか?
綺麗な音色が響いている。


深はいきなり立ち止まり、何故か踵を返し去っていこうとする。




「トイレ行く。見て来いよ陸」


声を掛けたらそう言われ、付いて行こうと思うと、やっぱり体育館が気になり。






……覗こうと体育館扉に手を掛けた。