「国崎くん彼女出来たんだ?」
ふと、隣から声。
隣の主、前川は興味なさそうにそう言った。
俺に目を向けず、片手のケータイを見ている。
ただ、体の向きだけはこっちを向いている。
周りのコソコソと言われるより、前川のようにズバッと言ってくれた方がまだマシだった。
周りのクラスの奴らは前川が聞いたことにより、手間が省ける。
そのため静かに聞き耳を立てていた。
「…彼女じゃないし」
とボソッと呟けば、
え? 何? 聴こえなーい! ちょっと! 何言ったの?
周りには聴こえてなかったのか、そんな話し声が飛び交う。
しかし前川にはバッチリ聴こえていたらしく、「なーんだ」とクスッと笑う。


