しばらくの間タオルを被せていたが、パッと誰かに取られてしまう。
「髪濡れた?」
「ちょっと」
頭上から聞こえる声は、二年生に進級してクラスが同じになり、深が俺と話すときに独占されている隣の席の主、前川由利(マエカワ ユリ)。
クラスの委員長。
返事をしながら、去年入学するちょっと前に色素を抜いたボサボサの茶の髪は整えられていった。
「はい、これでオッケー」
「ん、ありがと」
席が隣になってからか、よく絡むようになり、しかしいつもは深に席を独占されているため、大抵の休み時間は近くにはいない。
告白されている場面を何度か見たことがある。
何しろ周りの奴から面がいいため人気。
いい男しか興味がないと有名で、そう、クラスの奴らと他クラスの奴らからは「遊び人前川」と言われていることもある。
通称、腹黒らしいのだ。


