そう興奮して答えたのは、
当然私ではなく…。

「鉄ちゃんには聞いてないよ…」

志穂さんが悲しそうに微笑む。

あれ?

その志穂さんの眼差しに
鈍感な私でも気付いてしまった。

「とっ…透弥さん…」

透弥さんの腕を引っ張り

「んま〜小娘ったら
透弥様とキスするつもりね!」

鉄ちゃんの奇声を背に
三人から離れ。

「あのね…もしかしたらね…違う…かもしれないけど」

透弥さんの腕を引き寄せ。

「何?」

近付く顔に耳打ちする。

「志穂さんの好きな人って…」

そこまで言って又気付く。

志穂さんは透弥さんの元お相手。言って大丈夫なの?

悩み始め黙った私に透弥さんが

「鉄宏さんだよ」

断言した。

「…知って…たの?」

驚きで巧く言葉が出ない。

「当然でしょ?
彼等とは晶よりも付き合いが長いんだから…見ていれば分かるよ。気付いてないのは本人同士ぐらいじゃないかな?」

確かに透弥さんは周りの様子を
極め細かく観察し分析する。
当然他人の気持ちにも敏感だ。

鈍感なのは自分自身の評価だけ。

気付かない筈がない。

けど…でも…。

「鉄ちゃんは…」

それ以上先は言えなかった。


【完全な片思いだけど…つくづく恋愛に縁がないよ】

志穂さんの気持ちを思うと
胸が痛くて切ない。