乾いた笑いを浮かべる志穂さんに返す言葉が見付からなかった。

「私さ…透弥さんが初めての相手だったんだよね。
透弥さんも初めての筈なんだけどあの調子で妙に落ち着いててさ。緊張して焦ってるのが恥ずかしく感じちゃって…年上なのにって」

志穂さんが話し出す過去は
少し興味があるけど聞きたい様な聞きたく無い様な…。

複雑な心境で揺らいでいた。

「その時の透弥さんは多分私を…抱くことが任務だと思ってたよ。淡々と…私が選び抜いた下着にも私の体にも興味無さそうに唯体を重ねるだけで気持ちなんてない」

志穂さんの話は今の透弥さんとは違ってるけど…。

【当時僕は与えられた任務を実行するだけの心無い人形だった】

透弥さんも言ってたけど…。

志穂さんの気持ちを知ってる今、私は志穂さんにどう答えてあげて良いのかを見失っている。

「それでも…体を重ね合わせてるうちに透弥さんも少しずつだけど私を見てくれる様になってたよ。最初は一緒に泊まるなんて絶対に有り得なかったけど…」

想い出を語る志穂さんは
嬉々としていてまだ透弥さんを
好きなんだと感じさせる。

「私さ本当に嬉しくて…。
透弥さんが私の隣に眠ってるんだこんなチャンス二度と無いから」