鉄ちゃんは含み笑い

「気になる?」

勿体振ってはぐらかす。

「透弥様に直接お聞きしたら?」

「鉄宏…」

「止めて!その呼び方…鉄ちゃんって呼んで!」

軽く溜め息を漏らし、
私の片手を掌に重ねる。

「お時間も余り無いようですのでお疲れとは存じ上げておりますが同時進行で進めさせて頂いても、構いませんか?」

私が頷くのを見てから、
その手を両掌で包み込む。

「ネイル担当の長谷です。
ハンドマッサージを行ってから、ネイルに移りますのでご希望等が御座いましたら申し付け下さい」

長谷さんはプロ意識なのか私にも丁寧に挨拶をしてくれた。

「ありがとうございます。
初めてのことなのでお任せしても良いでしょうか?」

真っ直ぐ見て答えた私に対して、長谷さんは戸惑いを瞳に浮かべ、顔を伏せる様に手元に移した。

「小生意気な小娘だったらまだ…私も頑張ろうと思えたんだけど。透弥様に限ってね」

鉄ちゃんが納得してほくそ笑む。

「ほら時間が無いんですって!
お喋りしてる暇はないわよ!」

手に取ったクリームを馴染ませ、顔全体に乗せていく。

「肌はね擦っては駄目よ!
掌で包み込む様に肌に馴染ませるだけでいいの…こうして少し持ち上げる感じでやるのよ」

その間志穂さんは部屋を忙しなく出入りしていた。