不器用なLOVER

透弥さんも体操着を手に取り、

「…確に不公平かもね?」

口角を上げる。

「僕だけ脱いでるの…。
晶も脱ぎなよ」

私の体操着の裾に手を伸ばす。

「えっやっ…無理だよ。
誰か来ちゃうから…」

その手を阻止して叫んだ。

「誰にも見られなければいいんだ…なら、場所変えよっか?」

妖しい程の嬌笑に、
魅せられてしまう。

差し出された手を握り返した。

「…だから、晶には困るんだよ」

片眉を上げ、

「その警戒心の無さ…。
僕が宮原グループの嫡男だって、
分かってるの?」

思案顔をする。

「そのうち朋弥からも指導されるだろうけど…晶は無防備過ぎる」

透弥さんの警告も素通りして、

「朋弥さんに教えて貰うって…、さっき負けないって言ったのに」

その方が気になって仕方なかった透弥さんが負ける…。

「負ける気はない。
僕は勝って朋弥をパートナーに戻す。次期頭首正妻候補の教導は側近の役目…つまり晶の教育係は勝敗に関係無く朋弥の仕事ってこと」

それを一息に説明すると
眉を寄せた。

「それより、僕の話の途中だよ」

憤りを抑え自分の中で収めてから

「それも晶の悪い癖だよ?
人の話を最後まで聞いて、
意見は述べること。
今後僕の正妻候補と認められれば公に紹介されることとなるんだ」

諭し出す。