「裁判起こしたの?」

透弥さんに抱き締められたまま、その肩越しに振り返る。

「えっ?あっ…否…裁判は…」

朋弥さんが急に口籠り目を泳がせチラチラと透弥さんを盗み見る仕草で態とらしく私に訴えかけた。

背中を見せて座る透弥さんには、それが分からないはずだった。

「今更でしょ?散々彼女の周りで聞き込みに託けた嫌がらせして、最終的に示談したんだって素直に言いなよ…」

透弥さんのそれを受け朋弥さんが上を仰ぎ見る。

「何で知ってんの?」

「朋弥は詰めが甘いんだって…。家に着くまでがって言うよね?」

透弥さんの口角が上がってた。

「んだよ。結局俺の行動は筒抜けってことなんじゃねぇか…。
だとしたら、見合い相手と遊びでヤってたってことだよな?」

途中から形勢逆転に繋がる事実を発見したという様な期待が込もった顔に変わる。

実際朋弥さんの言葉に私の体は、正直で敏感に反応させてしまう。

「どうして?見合当日に既成事実を作りたい双方からの、当事者の意思が反映されないセッティングに…
幾ら仕事の速い朋弥でも間に合わせられなかったと思うけど?」

透弥さんはホントはそんなつもりなかったの?

でも…したんだよね?

心の靄が晴れず。
透弥さんの腕を掴んでいた。

「据え膳食わぬは…恥っての?」

朋弥さんが更に不安を煽る。