グランドから少し離れた体育館の水道場

「ぅわ〜くそっっ負けた。マジで信じらんねぇ」

三人しかいない空間に、
朋弥さんの雄叫びが響く。

「残り100mも有るの分かってて、スパート掛けるからだよ」

眼鏡を台に置き顔を洗う。

「ってかあの状況で巻き返されるなんて有り得ねぇんだよ」

朋弥さんが頭ごと水を掛け出し、それを横目に、

「前半で差を付けて逃げ切る作戦だったんだろうけど差が付かなければ意味ないでしょ?」

体操着を脱ぎ出した。

「マジムカつく。走り終えた後でんな涼しい顔してんじゃねぇってんだよ」

濡れて色が変わってる体操着は、朋弥さんの方だった。

「汗かいたから脱いだんだけど」

上半身を裸にした二人に背を向け会話に耳を傾ける。

「嘘吐け。何もかいてねぇだろ」

きっと私は学園中の女性の願いを背にしてるんだろうな。

憧れの存在の裸体像…。

そんなことをぼんやり思ってた。

「まぁ…ゴールして晶を抱き締めた時に汗臭かったら…嫌がられる…かもしれないから」

透弥さんの心許無い声に思わず、振り返って

「何で?そんなこと全然気にならないよ…」

透弥さんの肉体美を目の前に、

「ごめんなさい」

慌てて視線をそらす。