ムッとして唇を尖らせる私に、
一転して透弥さんも屈み込んで、

「惚けっとしてるからだよ…」

呆れ顔で溜め息を吐く。

透弥さんまで酷い…。
悲しく沈みそうになって、
うつ向いた。

「どこが痛いの?」

額に添えた手を外し、

「手当ての語源って知ってる?」

唇を落とす。

驚いて顔を上げると、

「まだ医学が発達する前は怪我人や病気人に手を当て慰めていたんだって」

朋弥さんに馬鹿にされてしまったあまり高くはない鼻の頭に唇が、触れる。

「今でも、母親が子供にやってるよね?」

含み笑う声に…。

「痛いの痛いの飛んでけ…?」

私が戸惑いがちに答えると、
頷いて唇にそれを合わせた。

「本当に小さな子供がそれだけで笑ったりすると高がおまじない…気休程度とも思えなくなるよね?実際に気の力の影響とも考えられてるらしい」

グランドの中心で学園中が見守る中で平然とキスをした透弥さんに愕然となり思考回路が停止した。

「少なくとも晶は今、
痛みを感じてないから手当ては、出来た訳だ」

透弥さんの言葉が素通りしてく。

「公然猥褻罪じゃねぇの?」

朋弥さんの呆れた声にも、

「猥褻って程でもないでしょ?」

泰然と構えたままだった。