前技者の退場後、
入場門をくぐり抜けて行く際。

「晶ちゃん応援よろしく」

朋弥さんの手が頭に触れて

最後尾の列が過ぎるのを見届けた透弥さんが、

「朋弥も張り切ってるから…」

擦れ違い様に呟いた。

透弥さんの背中を追い掛ける様に続く。

「朋弥さんの応援もするけど…。透弥さんが1番に帰って来てくれなきゃヤだよ?」

その背中に囁く。

振り返ることもなく進んでたのが急に立ち止まる。

「ぅわ〜」

それに合わせられずに透弥さんの背中に倒れ込んでしまった。

私の全体重が掛ってしまったのに微動もしないで支えてくれる。

顔面を強打し額を撫でていると、

「ぅわ〜晶ちゃん大丈夫?」

朋弥さんが駆け寄って来て
顔を覗き込んだ。

「あちゃ〜可哀想に…」

大袈裟な程哀れんで見せ。

「えっ?大丈夫だよこれぐらい」

朋弥さんに微笑み掛けると、

「大丈夫じゃないでしょ?
こんな鼻低くなっちゃって…」

ベタ過ぎる冗談を真面目な振りで言う。

冗談だと分かってはいても…。
透弥さんに朋弥さんといった、
彫刻美術の様に整ってる顔立ちの二人の前ではそれは完全な嫌味でしかない。