凛とした姿が近付く。

「それに俺、透弥が自分の意思で決めた縁談なら潰す気ねぇから」

目線を合わせるように顔を寄せ、

「俺がそれを止めれば、透弥には直ぐに縁談話が持ち上がる。
良家のお嬢様方も幸いとばかりに押し寄せてくるだろうな」

更に近付く…影。

声を潜める。

「宮原頭主は息子まで業績向上の手段の一部として捉え、好条件の揃った企業との提携に利用するだけだ」

耳元に口を寄せ。

「だから敢えて俺は透弥の悪評を流してやってんの。
流石の頭主も悪評絶えない息子に見合いなんてさせらんねぇしな。下手すりゃ契約不履行なんてことになって不利な条件飲まされかねねぇからさ」

体を起こし距離が離れ、

もう声も届いてるはず。

「んな訳で止めらんねぇんだわ。けど…もし晶ちゃんが透弥の愛人でも良いってんなら考えても良いよ?」

影が重なると同時に、

「有り得ないって前に言ったはずだよ?晶をからかって遊ぶの止めなよ」

背後から返る声を、

「別にからかってる訳じゃねぇ。マジな話してんだけど…」

当然の様に受け入れ、

「愛人が嫌なら俺にする?」

擦れ違う人を目で追う。

「却下」

私を背後に透弥さんが朋弥さんと対峙した。