透弥さんの足の速さは次の徒競争で証明された。

単純な競技はそれだけに誤魔化しも利かず際立った。

「透弥さん足速いね」

徒競争の終演と共に昼休憩となり退場門の前で待っていて近付くと

「本当は手のが速ぇけど…」

今回は別組で1位を収めた朋弥さんが答える。

「手が速いって?」

首を傾げて聞き返した。

「あれ?晶ちゃんには遅いの?」

ほくそ笑み肩を抱いて顔を耳元に近付ける。

「…したい?」

聞き取れなくて、
見上げ瞬きを繰り返す。

「ぅ〜ん、相変わらず可愛くて…キスしちゃう?」

離れていた顔が近付いてきて、

「からかい過ぎだから…」

溜め息と共にそれを制す。

「んだよ透弥。
ってかお前昼どうすんの?
学食使えねぇんだろ?」

透弥さんは私の顔を見て直ぐに、そらす。

「そっちこそどうするつもり?」

「俺?
俺はご心配なく女子の手作り…」

透弥さんに答える朋弥さんが私を見つめた。

「あっ…えっと、近くのコンビニで弁当買ってくるけど…透弥も一緒に行く?」

歯切れが悪く感じる。

「あっなら、朋弥さんも一緒に
食べませんか?」

「「一緒にって?」」

二人がハモるので、
たじろいでしまい…

「あの、えっと…透弥さんいつも学食だから…今日は、その…私がお弁当作ってきたの。いっぱい作ったから朋弥さんも…って」

内緒で作ってきたし、
透弥さんも持ってたらと思って、言えずにいたのに。

「あっ…じゃあ、俺断って…、
じゃねぇ用事済ましたら行くわ」

「僕も…」

二人が足早に去って行った。