ミシンは思ったより嵩張って、

「おっ重い。疲れた…」

隣校舎1階から会長室のある5階まで運ぶのは大変だった。

泣きたくなる。

誰か、手伝ってよ。

その願いが通じたのか、

「晶ちゃん?何してんの?」

背後から声をかけられる。

振り向かなくても分かる。

「朋弥さんこそまだ学校に居たんですか?」

「へぇ〜、声だけで俺って分かるなんて愛だね?」

軽口を叩きながら回り込んだ。

「変なこと言わないでください」

手に重さが食い込んで、
千切れるように痛い。

「急いでるので失礼します」

一刻も早く下ろしたい。

けど…朋弥さんには頼みたくない

そんな思いで立ち去ろうとした
私の手から、

「何処まで?」

ミシンを奪い取った。

「あの、大丈夫です」

手を伸ばす私から逃げるように、

「顔真っ赤にして息上げてる、
好きな子見過ごせないっしょ?」

動き、歩き出した。

「朋弥さん…」

「透弥に怒られる?」

透弥さんは恐らく怒ったりしない
でも私が朋弥さんに申し訳なくて

「ならさ、今だけ俺が晶ちゃんに惚れてること忘れて良いよ?」

朋弥さんが笑顔を向ける。

「ありがとうございます」

私は素直に甘えることにしてしまった。