透弥さんはきっと誰に対しても、こんな風に気遣いができる人で、

朋弥さんにだって絶対そうなんだって思う。

「透弥さんは…」

どうしよ、何て切り出す?
ふと、落とした視線の先で留まる

「何?」

達筆によって繰り広げられている芸術的で情感な世界に魅了されてしまった。

「僕が、何?」

透弥さんの声も耳に入らなかった

「うわぁ〜、不思議な世界に迷い込んでるみたい」

眉を潜め怪訝な顔の透弥さんに、

「綺麗な文字が紡ぎ出されていくのがこんなに素敵なことなんだって初めて知った」

素直に感動を伝える。

それまで休むことなく動いていた手が止まって、

「何、言ってるの?」

見れば片眉を上げ呆れ顔をしてる

「一応、褒めてるんだから…」

何よ、普通に思ったこと言っただけじゃん。

「透弥さんってホントに色々でも出来ちゃうんだね。勉強に運動に字も上手で…」

そう言えば前に朋弥さんが言ってなかったかな?

「透弥さんって楽器も何か習ってるんだよね?」

目を丸くして、

「僕、晶に話した?」

首を傾げた。

「えっ…確か聞いたような?」

咄嗟に誤魔化しちゃった。

正直に朋弥さんに聞いたって言った方が良かったかな?

鼓動が活発になり、
透弥さんの次の返事を息を飲んで待った。