「この男嫌い」

衣里の選んだラブストーリーに真姫が、

「何か言ってること嘘臭いし」

文句吐けてる。

「映画なんだから当たり前でしょ。作り物なの」

衣里は画面から目を外さず返すが

「こんな男いるはずないし」

真姫はまだ言ってる。

「もう真姫は良い男が本当に嫌いなんだから」

衣里の汎論に、

「えっまさか真姫が透弥さんのこと嫌いなのはそれが理由…?」

私の驚きに反して、

「だって完全な人間なんていないじゃん。欠点のない人間ってなんか怪しい」

あっさり返す。

そんな単純な理由なの?

「でも欠点見付けると180度態度変えるよね?」

登喜子が笑い出す。

「真姫の彼氏家庭教師でイケメンだったんだけど、超貧乏学生って分かった瞬間猛烈アピールし始めたの」

「だって可愛いかったんだもん」

登喜子にからかわれて珍しく、
真姫が赤くなってる。

「じゃあ衣里の彼は?」

映画のエンドロームに衣里が、
振り返る。

「彼は家の病院のインターンよ」

衣里の話を聞いてる間に、
登喜子がDVDを入れ換えていた。

何気無く画面に視線を移せば、

激しく抱き合いもつれ合う男女。

いきなりラブシーンからですか

…って、何故か男の隠し持ってたナイフが背中に突き刺さり、

山中に埋められたのに、

手が…

ってホラーかよ