「ふーん。ま、いいけど」


「詩織こそ、何で泣いてたの?」


ポケットに手を突っ込みながらあたしの前を歩いてた零が後ろを向いた。


「何で?」


いつにもなく、真剣な顔の零。
何で、って…零との約束守れなかったから、なんて言えないよ!
恥ずかしすぎて。



「あーあんなとこにいるあたしが情けなくなってさ?昴の手でも振り切って逃げちゃえばよかったなぁーなんて思ってたら涙出てきた」


「それだけ?」


「それだけ」


「何もされてない?」


「されてない」



不満そうだったけど、やっと納得してくれたようで前を向いてまた歩き出した。
何でそんな急いでんの?

あ、もしかして今だったら夕飯間に合うとか?



後、家までは5分程度でつける。


「ねぇ、今何時?…あぁあー!!!」


駆け寄ったあたしが急に大声をあげるものだから、びっくりしたらしい。
目を大きく見開いた零がいた。
普段のきれいな顔はそこになくて。
零も弟なんだなぁーって実感した。


「な、何だよ?」


あたしが温かい目で見守ってたって言うのに、若干キレぎみで零が聞いてきた。
そして、あたしが忘れてた重大な事を零に打ち明けた。


「ケータイ忘れてきちゃった」


バックはかろうじで持ってきてたものの取られていたケータイを返してもらうのを忘れてた。


前言撤回。



会いたくないけど、会わないといけないみたいだ。