うん。鬼より魔王の方があってるかもしれない。
でも、魔王になったのは一瞬。
すぐにいつものみー君に戻り口端を上げて笑ってる
「直也、あいつら1人も逃がすなよ。」
この人「直也」っていうんだ。
「は?」
「早くしねーと、逃げられんぞ?」
後ろを振り返った直也さんが
「何で俺が…」
ってぶつぶつ言いながらもポケットから携帯を取り出し誰かと電話を始めた。
「立てるか?」
みー君が差し出してくれた手を掴みながら立ち上がると足元に何かが落ちた
ん?なんだろ…?
落ちてる“それ”をみー君が拾いあたしの肩にかけてくて
コート…?
「風邪引かないように羽織ってろ」
あっ、さっき肩に触れたのってこれだったんだ。
多分、これはみー君のコート。
だって、電話が終わった直也さんと何かを話してるみー君は上に何も羽織ってないから。12月にあんな薄着で外に出ることはまずないもだろうし
それに、このタバコの匂い…
前にあった時に吸っていたタバコの匂いと同じなんだもん。
話し込んでる2人を見ていると、直也さんと目が合った。
ニコッと笑ってあたしのほうへ駆け寄ってきた直也さんに耳元で囁かれた
「優輔に食べられないように気をつけてね」って。
怪しい笑みを浮かべる直也さんにあたしは苦笑いを返すしかなかった。

