「やっー…」


不意に耳を塞いでる手の手首を掴まれ、耳から引き剥がそうとしてきた。


えっ…!?
腕を掴んでるのは…だれ?



肩の上に乗ってる物に気を取られてて、誰かが近くに居るなんて思わなかった。

よく考えれば目を閉じて、耳を塞いでたら近寄ってきたことにすら気付かないか。



そばに居るのが誰なのかがわからないからすごく怖い。
だからと言って、目を開けて確認するのも怖い。


だって…

もし…もしも、目を開けたときに目の前に居たのが追いかけてきた5人の中に1人だったらどうする??
考えただけでゾッとする…


もしかしたら、あたしの前に立ち塞がってくれた2人のうちどっちかかもしれない。
それなら、まだ助かる見込みがあると思う。


大げさだ!って言われるかもしれないけど、目を開けた瞬間あたしの今後の人生が決まる気がする。



そんなの絶対無理。あたしにそんな勇気ないよー…





でも、次の瞬間あたしは目を開けていた。というより、見開いてたって方が近いかも。



耳から手を引き剥がそうとした時にできた少しの隙間
そこから耳に入ってきた言葉が『初美』だった




咄嗟に叫んだ言葉が聞こえただけかもしれない。
でも、なんとなくあたしに向かって言われた言葉のような気がした。


あたしの名前を知ってるのはおかしい。自己紹介なんてしてないんだけど


…どうしてあたしの名前を…知ってるの?




自分の名前を呼ばれたことにビックリして目を開けてしまったあたしは、さらにビックリする羽目になった。