最愛の人




「そのタオルは、目を冷やす為に持ってきた。」



目?
いわれてる意味がわからなくてあたしが首をかしげると
"彼"の手があたしの目元に伸びてきた。



「さっき泣いてただろ?だから目が腫れてる。」



あー、そういえば…さっきまで泣いてたんだった。



「冷やしたほうがいいと思ってな。あと、お茶も買ってきたけど飲むか?」



あたしが頷いたのを確認すると微笑みながらお茶を差し出してくれた。


何がいいかわからなかったらしく、お茶なら飲めるんじゃないかと思って買ってきてくれたんだって。
炭酸とコーヒー以外なら飲めるって答えたら、『ガキだな』って言いながらすっごく笑われた。




「あいつに頼んだ濡れタオルは腕を冷やす為だ」



今度は腕?って思ってたら"彼"があたしの腕を指差していた。



「何これ!?」

あたしの腕には掴まれた痕がくっきりと残っていた。
掴まれた時は痛いって思ったけど、まさか痕が残ってるなんて…




「痛いか?」



「ううん。今はもう痛くない。」



切なげに聞いてきた"彼"は、あたしの言葉を聞いて少し安心したのか優しい笑顔をあたしに見せてくれた。





ドタドタドター…って遠くから足音が聞こえてくる。
徐々に足音が大きくなり、さっきの男の人達が戻ってきた。


「失礼します!頼まれたものを持ってきました。」