どうしよう…
まだ怒ってるのかな?



恐る恐る横を盗み見ると"彼"と目が合った。


「これ使え」


かけられた声は穏やかな優しい声。
心地いいぐらいの低い声。

さっきと違って表情も優しいから少し安心した。


だって、あの鬼みたいな顔で睨まれたりしたら…想像しただけで怖い。




…?
これって”濡れタオル”だよね?

"彼"に手渡されたのはどこからどう見ても”濡れタオル”


なんで”濡れタオル”がここにあるの?
さっき男の人に頼んだのも”濡れタオル”だったよね?
…これをあたしにどうしろっていうんだろう?


「どうした?」



"彼"が濡れタオルを見つめたまま動かないあたしを不思議そうに見ている



「…これ…何?」



「どう見ても濡れタオルだろ。お前には違うものに見えんのか?」



うん。あたしもどう見ても濡れタオルだと思う。
それぐらいはあたしにもわかる。


じゃなくて、ここに濡れタオルがあるのにどうして男の人に濡れタオルを頼んだのか。
この濡れタオルをどうしたらいいのか。そんなことよりあなたが何者なのか。
色々聞きたいことがあって…


悩んだ結果あたしの口から出た言葉が…『これ何?』



あたしの聞き方が悪いね。
えーと、まず何から聞こうか?



「…お前面白いな。」



「えっ?」