腕が離されたのを確認すると"彼"がこっちに向かって近づいてきた


さっきとは打って変わって表情が優しい。
眉間の皺はなく、イライラオーラも出ていない。



まるで別人ー…




でも、優しい表情だったのは一瞬で
あたしのすぐ目の前で足を止めた"彼"の表情はまた険しくなった。
こ…怖い……




さっきは遠くてよくわからなかったけど、近くで見るとすごい迫力。

"彼"はすごく怖い人なのかもしれない…




「おい」


すごく低い声。今までよりさらに低い。

あたしの腕を掴んでいた男を威圧的な目で見ている
ううん、見ているんじゃなくて睨んでるに近いかな…


あたしが睨まれてるわけじゃないのに背筋がゾクゾクする。
きっと彼の雰囲気…オーラのせいだと思う。


頭を下げていた男は顔を上げると"彼"の顔を見つめたまま動こうとしない。



「濡れタオル持って来い」



「…え?」



聞き返した男を無視しし、あたしの腕を掴むとベンチに無理矢理座らされた。



「3分以内だ」



返事になってないよ!!


でも、聞き返した男は理解したのか


「失礼します!」


一礼して他の男たちと足早にどこかへ行ってしまった。