懐かしい場所は思い出を語らせる。


ブランコに並んで腰掛けたあたし達は、何故か昔の話をしていた。

まだ、あたし達が男と女になるよりずっと以前――幼馴染みの頃の。


そんな話ばかりをするコーちゃんが、本当に話したいのはきっとさっきの話で。

それを判っていながら、気付かぬ振りをする、狡いあたし。


知りたくない。
もう、これ以上。

――決定的な言葉を聞きたくなかった。


でも、コーちゃんはやっぱり大人で、一枚どころか何枚も上手。

「……友里」

今の今まで談笑していたのに、あたしの名を呼ぶその声があたしの動きを止めた。


眼鏡の下に隠された鳶色の、輝きが増す。

いつになく真剣な面持ちのコーちゃんは、“幸大”の顔をしていた。