いつもより倍の時間をかけて帰宅したあたしは、家の前に佇む二つの人影に足を止めた。

重なり合うシルエットの先に見えるのは、スーツ姿の綺麗な女性とコーちゃんの後ろ姿。


あたしに気付いた女性がコーちゃんの服の裾を引っ張ると、振り向いたコーちゃんがあたしを呼んだ。


「友里」

女性はあたしにぺこりと頭を下げてから、去り際にコーちゃんに耳打ちする。


小さな声だったけど、聞こえてしまったその甘いソプラノ。


――約束、守ってね。
また、ね? 幸大くん。


コーちゃんを“幸大”と呼ぶその人は、あたしには二度とないであろう、“幸大”と繋がりを今後も持っている女性だった。