「そういえば、ベルモンドさんのとこのお坊ちゃんはどうなったのだろう?」



そういうと、主人は思い出したように続けた。



「そういえばローズは、坊ちゃんとはどうなっていたんだ?色々噂があったが・・・」



もともとはこの二人のことで噂は持ちきりだったのだ。



だが、ベルモンドがいなくなり、ユハが現れた。



しかも雰囲気からしても、端から見れば、恋人同士だ。



もうこの時点で、村人達はローズの相手は、この容姿端麗な若者だと認識しただろう。




「噂は噂でしかない」


「んん?」



ローズが話す前にユハは口を開いた。



「その上、ベルモンドの片思いでしかなかったのだから、ローズは困っていたんだ」



そう言って一着手に取り、主人に"これにする "と言って渡した。



主人はあっけに取られていたようだが、ユハの冷たい瞳に見られると、急いで"ハイ "と言って、会計を済ませた。



いつもローズといる時に見せる優しい甘い眼差しとは反対で、今日は冷めた瞳をしていた。



ユハは、ベルモンドの名前が出てきただけで自分でも驚くほど、苛立っていた。




あいつはもうこの世にはいない。


もう誰にもローズを奪われることはない。


なのに、どうしてこんなにも恐れて不安になるんだ?




ローズとの楽しい買い物のはずが、ユハは嫌なことばかりが浮かんできてしまい、すっかり気分が滅入ってしまった。