だったのでしょう?って・・・・っていうか、この人、自分の息子の恋愛事情何も知らないのかしら?



ローズにはそんな疑問が浮かび上がった。




「ちょっとブリジット・・・それは誤解だわ。それに、気が合ったのは、フィデールだけで、ローズは少しもその気はなかったのよ」



ブリジットとは、夫人の名前。



ローズは母が自分よりも身分の高い夫人を名前で呼べるのかわからなかった。




「ちょっと、マリー。気やすくあたくしの名前を呼ばないでちょうだい。それに、何?その言い方だとまるで、フィデールの片思いのように聞こえるけれど・・・」


いや、そうですけど・・・



「そうよ。何か問題でも?」


マリーがそう言うと、夫人はフンッと鼻を鳴らした。


「そんなことあるはずがないでしょ?町中が噂しているのよ?」


「それは、勝手に流れた嘘です。あたしは一度もフィデールさんに求婚されたこともありませんし、町であっても話をするだけです」


「ほらな。君の思い過しだ」



ずっと黙っていたフィデールの父が口を開けた。



「あなた、でも・・・フィデールはあんなに」


「君はフィデールの死を誰かのせいにしたいだけなんだ。それに、もう過去のことを気に留めるのは止めなさい。もう、終わったことだ」



それを聞いた途端、マリーは目を伏せた。