知らない間に、傍に来ていたユハに、3人は視線を向ける。



「あぁ・・・・・そうだ」



それを聞いて、アリスは「やっぱり」と呟いた。



するとセドリックは、少し苦笑いをしながら、こう続けた。



「でもね、僕だって何も人間に復讐しようと思って魔の谷で修業してたんじゃない・・・」


「え?」



セドリックは目を細め、空を見上げた。



「忘れられなかったからだ・・・あいつを・・・・・グレースを」




───────────・・・・・・


セドリックは昔から、密かに好意を寄せる女性がいた。



名はグレース。



美しい漆黒の髪を持つ、第二級悪魔だった。



グレースにとって、セドリックは弟分でしかなく、恋愛感情などこれっぽっちもなかった。



そして、グレースは他に好きな人がいた。



人間の男だった。



ローズの父親、ローランだった。




『グレース、みんなんとこ行こうよ!』


『・・・セドリック、1人で行ってくれる?あたしは行かないから』




日に日に、自分を構わなくなるグレースに、不満を持つようになった。