香代子が着いたのは夜11時を過ぎていた。

静まり返る家の中。 散らばるガラスの破片。

弘樹は顔のあちこちから血を流したまま、酒を飲んでいた。

真奈美からの電話で香代子はおよその事情は知っていた。

(手を出したのは母で、父は暴力はしていない)


『お父さん、大丈夫・・・?』

濡れタオルを差し出すと、弘樹はそれを受け取った。

香代子は黙々と、ガラスを片付け始めた。

『お父さん、年越蕎麦でも食べようか? 海老の天麩羅買ってきたんだよ。 』


湯を沸かし始めた香代子の後ろで、弘樹の目からは涙が零れていた。