(……だが、それでも…)
そんな自分にいつも同じ目線で傍にいてくれた者達。
小さい頃から喧嘩までしていた、自分と執事…。
王子である自分をちゃんと叱ってくれた姐御…。
いつも気を遣ってくれるメイド達…。
自分のリクエストを喜んで聞いてくれるシェフ達…。
━━━そこで、やっと気がついた。
(……信じて、いいのか…?)
自分が見ていなかっただけで、本当は最初からいたのだ。
(俺にも
側にいてくれる人達がいたと…、
信じてもいいのか…?)
心の中で、そっと自分に問い掛ける。
その問い掛けに答えるように、娘は言い聞かせるように囁いた。
「それでいいんだよ…。」
……いつの間にか、頬が濡れていた。それが涙だという事と、漸く自分が泣いていた事に気がつく。
娘は王子の頬にゆっくり触れる。
「王子である事に誇りを持って…?
貴方は貴方のままでいいんだよ…。
貴方は、愛されてるんだから…」
まだ濡れている王子の瞳を真っ直ぐ見つめ、優しく微笑んだ。